今日は基礎の基礎、B♭(記譜音:チューニングのド)から下の下のEまで、16拍のロングトーンをPP(ピアニッシモ)でじっくりと。衰えを感じる唇を、一枚ずつ丁寧に重ね合わせるような気持ちで慣らしました。
正直に言えば、54歳という年齢は想像以上に手ごわいです。 かつては何気なく決まっていた音が、ふとした瞬間に当たらない。あんなに澄んでいた音色が、不意に揺らぐ。突き抜けるようなハイノートも、今では遠い記憶の向こう側に霞んでしまったかのようです。
自分の頭の中で鳴っている「理想の響き」に手が届きそうで届かない。その距離が少しずつ広がっていくもどかしさは、長く続けてきたからこそ味わう苦い感情かもしれません。
けれど、ここで楽器を置くつもりはありません。 たとえ理想から遠ざかっても、今日この一音に全神経を集中させる。その泥臭い積み重ねの先に、今の自分にしか出せない「深みのある音」がきっとあると信じています。
54歳。まだまだ、この一本の楽器と一緒に足掻いてみたい。そう思っています。


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